インターネットが普及して、地球上のどこにいても、誰とでもコミュニケーションできるようになりました。ですが今日、みなさんがメールやSNSを活用し、接している相手は誰でしょうか? それは「世界中の人たち」ではなく、仕事仲間、趣味の仲間、飲み仲間、肉親、たまに会う従兄弟、同級生たち......せいぜい10人とか、多くて100人程度ではないでしょうか。

元編集者のふたり、小林弘人・柳瀬博一両氏の会話をまとめた本書は、「インターネット時代の企業やメディアのコミュニケーションの規模はそんな『村』のサイズに戻っている」つまり、人々はテクノロジーを操る原始人「原始人2.0」になったのだという仮説のもと、展開されます。イギリスの進化生物学者ロビン・ダンパーの『友達の数は何人?――ダンパー数とつながりの進化心理学』によると、人間が「友達」として認識できる人数の上限は脳のサイズと機能から150人程度までだそうです。「あらゆる人がつながれるようになると、むしろ原始時代の人付き合いの規模に近くなる。数人の家族的コミュティを最小単位として150人くらいの村のサイズが最大の単位に。」と両氏は語ります。

そんな小さな村がたくさん集まった現代のコミュニティでは「小さな村の中の噂話」がコンテンツになります。飲み屋でしゃべっていた内容が、ツイッターやFacebookでのコミュニケーションになることで、ネット上のコンテンツになります。テレビや雑誌より、「あいつがすすめてる店ならおいしいだろう」といってレストランを選ぶなど、誰もが体感していることを、本書では元編集者のふたりが分析し、インターネット、マーケティング、メディア、あらゆる社会的な事象と絡めて読み解いていきます。また、本書では「巨大組織の中で生きる現代人」から、「小さな村で活動する原始人=ハイテク・バーバリアン」に進化した者に今後の生き残るヒントがあるのではないかと述べています。


手作り製品を介してストーリーを届けるECサイト

「新しい時代の買い方」を模索する我々としても注目したいのは、第7章「SF力で未来を編集せよ」で著者が取り上げているECサイト「Etsy(エッツィー)」。このサイトはヤフオクなどと異なり、出品者は「自分で作ったもの」を売っています。小林氏はこれを「そこにはその人なりのストーリー紹介があって、それがめちゃくちゃおもしろい」と評しています。エッツィーの商品にはその人なりのストーリー紹介があって、それに対して「私はあなたを応援します」と顔写真付きで応援するほかのユーザーが何十人もでてくるといいます。つまりエッツィーが売っているのは出品者の物語、すなわち「人」。手作り製品を介して、自分自身を売っていると両氏は語ります。

※「エッツィーで買ってみた」記事はこちら


じつは「編集者入門」だった

本書はインターネットやメディアビジネスの最先端を知ることができますが、著者はあとがきで本書について「編集者入門だと思う」「『編集力』があらゆる分野のブレイクスルーに貢献できると予感した」と言います。前述のエッツィーもある意味、ひとつひとつにストーリーのあるコンテンツをまとめて、編集したサイトと言えるでしょう。エッツィーだけでなく、あらゆるインターネットサービスにはコンテンツをまとめ、ストーリーを伝える編集力が必要になってくるのではないでしょうか。本書を読んだあとにインターネットショッピングをすると、ひとつひとつの何気ない行動も、より深く考えてしまいそうです。

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『インターネットが普及したら、ぼくたちが原始人に戻っちゃったわけ』

著:小林弘人、柳瀬博一 (出版社:晶文社)

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