日本の漫画やアニメ、ゲーム、コスプレなどの「オタク文化」に関する情報を、海外のファンに向けて紹介するため、Facebookをメディア化させて大きな話題となった「Tokyo Otaku Mode Inc.」。今回は、CEO・亀井智英氏に、ECショップ「Tokyo Otaku Mode Premium Shop」の起ち上げの経緯や、サービスの運用などについてお話を伺いました。

――当初は全世界に向けて日本のコンテンツの魅力を伝えていくことがメインだったと思いますが、その中で「Tokyo Otaku Mode Premium Shop」を始めた経緯を教えてください。

実は、初めの事業計画の中にECの構想も含まれていましたが、越境ECの運用は大変だと思っていたので、計画の段階で止まっていました。それが、アニメ・漫画のコスプレや商品写真をFacebookで紹介していると、投稿を見たユーザーから商品の詳細情報に関する問い合わせが多くあるんです。最初はメーカーのサイトなどを紹介していたのですが、「日本語だから読めない。あなたたちで売ってよ」という意見が多く、じゃあ僕たちがやりましょう!となったのが立ち上げのきっかけです。

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――実際にECをやってみようとなった段階で、海外戦略はどのように考えていたのでしょうか?

まずはやってみようと、簡易な販売ページを作って見たところ、売れたんです。本格的に動き始めたので、越境ECを取り組まれた方々にヒアリングをしました。成功したところよりも失敗したところの話を聞いたほうが、どこに地雷が埋まっているか分かると思ったので、海外向けECを撤退した方々に話を聞いてまわりましたね。

――その話の中で一番印象的だったのは、どんな理由ですか?

越境ECから撤退した理由は様々でしたが、中でもクレジットカード詐欺が多いということに驚きました。日本だとクレジットカード詐欺ってなかなかないと思うんですけど、海外だとまだまだ多いそうで。そういった日本では予想できないことが、ビジネス参入の障害になっているのかなと感じました。

――確かに、クレジットカード詐欺は、日本だと予想しづらいですよね。

そうですね。あとは、物が届かないこと。アメリカでは時間指定やコンビニ受取はできないですし、1回不在だっただけでお店に返送されてしまうことも。「割れ物注意」と書いてあったら逆にふざけて投げているような動画がYouTubeに上がっていたりするんですよ(笑)。

日本の配送システムがいかに最高のクオリティか思い知りました。

――決済システムは、どのように決められたのでしょうか?

当初はC2C向けの決済サービスを利用していましたが、カート機能が無かったので合わせ買いはできないものでした。売上が出始め、EC事業はいける、と思ったので、決済から、在庫管理、発送作業に至るまで、約3ヵ月でECの仕組みを全て自分たちで作りました。普通ならASP対応するところですが、エンジニアの気合い、根性みたいなもので全部作っちゃう。僕らくらいの小さな規模でそんなことをやっている会社は稀なのですが、そうしないとクオリティコントロールができない。TOMのファンが求めているものを自社で叶えるためにも内製化にはこだわっています。本当にゼロスタートで始めているので、ここまで転げ回りながらやっている会社って、他にないと思いますし、ここは強みになっていると思います。

――物流に関しても、全部独自のシステムでやられているというのはすごいですね。

最初は商品点数が少ないこともあり、オフィスの一部を倉庫にして、社内で梱包して海外に発送していました。商品点数が増えるにつれてそろそろ倉庫を作らないととなり、パートナーの人たちと千葉に最初の倉庫を作りました。そこでもスペースが足りなくなってしまい、今年2月に舞浜に内製化した倉庫を作り移りました。

また、倉庫はTOMが関わる最後の地点です。届いた商品の箱を開けたときに「ああ、TOMで買ってよかったな」とか「またTOMで買おう」と思って欲しい。TOMのファンになってもらうための最終チェックができるところなので、特に重要なポイントだと考えています。

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――ECの難しさを感じたことはありますか?

ECの難しいところは、データを売っているわけじゃなくリアルな物を売っているので、仕入れが発生するところですかね。キャッシュアウトが先ということのダメージが、ベンチャー企業にはボディブローのように効いてくる。最初の頃はお金がどんどん減っていく怖さがありました。

それと、ECは一連の流れがすべて繋がっているんだということを、運営する上でより強く感じるようになりました。どこか1ヵ所でもケガをすると全身に影響が出る人間の身体と同じで、機能が一つでも欠けると成り立たないんですよね。

――返品や交換の対応については、どのように決められていますか?

自前のカスタマーサポートチームでガイドラインを作り、対応しています。定期的にガイドラインはブラッシュアップしています。

印象に残っているのは「商品が臭いから交換してほしい」ということがありました。その商品は素材に本革を使った商品だったので、本革特有の匂いがするのは確かだったんですね。そもそも取り替えたところで本革の匂いなので、どうしよう...と(笑)。これらの経験も踏まえて、どういう状態であれば返品・交換に対応するかは、レギュレーションを作りました。

TOMの商品は嗜好品のため、こだわるお客さまはとことんこだわりますし、開封用と保存用を購入されるお客さんも多いです。ECでは商品を手に取って見ることができないですし、返品・交換の対応はショップの評価にも繋がるので、かなり細かいレギュレーションになっています。

――趣味嗜好に特化した商品だからこそ、売る側も丁寧に...ということですね。

「クレームが来たときにどうするか」だけでなく、「そもそもクレームが来ないようにするためにはどうするか」ということも重視しています。梱包を丁寧に行っているのもその一つです。喜ばれることでいうと、オリジナルのロゴが入った箱を使っている点ですね。また、商品をくるむ緩衝材として、初期には日本の新聞紙を利用していました。これは僕が高校生の頃、アメリカへ行った際に、書店で本を買ったら英字新聞に包んでくれたのがすごくカッコよくて嬉しくて。そこで同じようなことをやったらウケるかなと思ったのがきっかけです。そうしたら「まさにこれです!」って喜びの声が届いたんです。たぶんTOMのお客さんは、「日本で買った」ということをしっかり感じたいんでしょうね。

――越境ECということで、関税や法律に関しても苦労した点があれば教えてください。

日本から発送する商品と、アメリカから発送する商品の2種類があるんですけど、今は7割5分くらい日本から発送しています。関税については免責事項で、「関税がかかる場合もあります。それを理解して購入してくださいね」とユーザーに了承を取っている形で対応しています。細かい要求の対応はできないのですが、「関税がかからないよう、こういう配送方法にしてくれ」とか「商品の金額を記載しないでくれ」という要望がくることもありますよ。違法なことはもちろんできませんが、国内ECでは想定できない要望が来るので、走りながら考えないといけないのが大変ですね。

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――海外向けにサイトを日々運用していく上で、他にも気をつけている点などはありますか?

グローバルサービスなので、「どの時間帯でもサービスを落としてはいけない」というのがあります。例えば、日本だと「夜中の2~5時までメンテナンスです」とできますが、そういったことはできません。常にオープンな状態にしておかないといけないのが大変ですね。カスタマーサポートも、一次返信は24時間以内に行っていますし、アクセスが集中したときや緊急性の高い問題が発生したときには、エンジニアがいつでも対応できる体制にしています。

あとは日本語の商品名や説明などを全部英語に翻訳しているところも、一手間かけています。TOMだと商品を売るためのキャッチコピーも考える必要があるので、「日本人で英語もわかる人」ではなく「英語がネイティブで日本語もわかる人」をアサインしています。ただの対訳じゃなく、商品を買ってもらうための英語を書ける人じゃないといけないからです。それができる人って、海外にたくさんいるんですよね。だから日本のオフィスに通えるという条件を外したほうが見つかりやすい。リモートワークで世界各地で働いてくれています。リモートワークのメンバーとは、物理的に離れていますが、TOMに関わっていることを意識してほしいなと思っているので、何かの記念日にはTOMのロゴが付いたTシャツやパーカーを送ったりしています。海外のインターンの子が、「この前、海へ遊びに行ってきました」と言って、砂浜に「I LOVE TOM」と書いた写真を送ってきてくれたりすると、TOMをやってよかったなあと思います。

これからも、人との繋がりは大切にしていきたいですね。

僕がTOMのTシャツをよく着ているのも、自社サービスの宣伝もありますけど、離れているメンバーと繋がっていたいという思いがあるからなんです。最近では可能な限り、どこへ行くのにもロゴTシャツやパーカーで行くようにしています。内閣府の集まりなんかもこのTシャツで行ってきました(笑)。

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――TOMには海外の方も多く携わっているそうですが、やはり、日本文化やコンテンツが好きな方が多いのでしょうか? 

そうですね。日本のコンテンツが好きだから日本語を話せるようになった...というバイリンガルやトリリンガルの人も多くて、すごく恵まれていると感じますね。僕らの実力ではなく、日本のコンテンツの魅力のおかげで、優秀な人が集まってきていると感じます。今はFacebookのファンも1800万くらいいますけど、TOMのファンというよりは、日本のコンテンツが好きな人の集合なんじゃないでしょうか。

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後編では、TOMの今後の展望について紹介していきます。

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