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エステやスポーツ、カフェランチにスーツのオーダーまで、さまざまな体験を贈ることができる「体験ギフト」。現在では大手企業も参入しギフトサービスの一角を成している「体験ギフト」ですが、日本で誕生したのはたった10年ほど前。その立役者となったのが、当時24歳で起業し、体験ギフトカタログ『Sow Experience(ソウ・エクスペリエンス)』の販売を始めたソウ・エクスペリエンス株式会社の西村琢社長です。今回は、学生時代からビジネスに興味があったという西村社長に、独創的なアイデアの源、そしてECサイトでの販売について伺いました。

学生時代から「ビジネス」を意識していた

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――西村さんは非常にユニークなご経歴をおもちですよね。慶應義塾大学在学中に松下電器産業(現パナソニック)の学生向けビジネスプランコンテストで優勝されたそうですが、学生時代からビジネスや起業に興味があったのですか?

西村:そうですね。高校生の頃から自分でビジネスをやりたいなと思っていて、株式投資をしていました。投資とは言ってもたいした金額ではなく、3万円とか5万円ぐらいでしたが、アルバイトで貯めたお金を株に投資するのがすごく楽しくて。ちょうどITバブルの時期で、僕はIT企業の株は高くて買えなかったのですが、そういった企業の事業展開や市場の動きを目の当たりにしておもしろいなと感じていました。その経験がけっこう大きいかもしれないですね。その後、具体的にビジネスプランコンテストへの応募を検討していたところ、優勝したら5,000万円を出資するという松下電器産業の学生向けビジネスプランコンテストの存在を知って応募した結果、優勝しました。

――:西村さんの企画は、ゴーカートのレジャー事業でしたよね。どんな内容だったのですか?

西村:ゴーカートって乗ったことありますか? 僕は大学時代に知り合いに誘われて始めましたが、とてもおもしろいですよ。でも、施設は古くて、人も集まっていない。おもしろさと集客のギャップが激しいんです。これを、自分の力をもってすれば、もっと盛り上げられるに違いないという自信があって企画にしました。でも、結果的にはやりませんでした。本当は、優勝したら大学卒業と同時に会社を立ち上げて、その会社にパナソニックが出資するという仕組みだったのですが......。

――西村さんは起業せず、卒業後は松下電器産業に入社されたのですよね。

西村:いえ、実は正確には入社もしていません。1年ほど契約社員みたいな形で籍を置きながら、ゴーカード事業のプラニングを進めてはアドバイスをもらってまた提案というやりとりをしていたのですが、最終的には事業は跡形もなくなりました。ちょうど1年たった頃、役員を交えた席でゴーカート事業に関して最終提案をする機会があったのですが、結果的にOKは出ませんでした。それでも、会社の方には「またチャンスもあるだろうから、新規事業部で2~3年修行をしてはどうか」と言っていただいたのですが、事業プランを練るうちにゴーカートだけでなくもっとさまざまな体験ができるものを提供したいと考えるようになり、僕としてはもう倒れるぐらいに前のめりだったので、それを断った直後に今の会社を作りました。

ゴーカートから「体験ギフト」へ

――松下電器産業で温めた事業プランが、現在御社が提供している「体験ギフト」だったのですね。日本ではまだなかった「体験ギフト」を知ったきっかけは?

西村:ビジネスの経験がないので、とにかく情報をインプットしなければいけないと思っていて、さまざまな創業者の書いた書籍を読んだり、Webサイトをチェックしたり、世界中の先端的なビジネスを片っ端からチェックしました。そのなかで、イギリスのヴァージン・グループが「Experience Gifts(エクスペリエンス・ギフト)」をやっていると知って。調べると複数の企業が参入していて、実際にサンプルを取り寄せてみたら、これはおもしろいなと感じました。ゴーカートもそうですが、もともと僕のなかには「実体験」や「身体性」がテーマとしてあって。"エクスペリエンス=体験"には強い思い入れがあるので、見つけたときに「これだ!」と思いました。

――"エクスペリエンス=体験"は、西村さんにとって重要なテーマだということですね。それでは、いざ「体験ギフト」をビジネスとして展開するにあたり、どのように進めていったのですか?

西村:最初に作ったのが、1万円で購入できる体験ギフトカタログです。そして、カタログを販売するためにECサイトを立ち上げました。カタログに載せる体験プランを集めるために、提携店舗(加盟店)が必要なので、半分は人に紹介してもらい、もう半分は自分たちで探して、まずは10社ほどでスタートしました。茶道教室の体験コースにお客さんとして参加して、終わった後に段ボールで作ったサンプルを見せて商談したこともあります。まず自分たちで体験してみるというのは今も同じで、カタログに採用するか否かを検討する前に、僕や当社のスタッフが必ずプランを体験しています。実は昨日も、採用を検討しているスケートボードのレッスンに参加しました。常に自分たちが体験しておもしろい、楽しいと思えるかどうかが大事だと考えています。

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現在のECサイト

大切にしてきたのは「言葉」

――現在は百貨店やコンビニエンスストアなどのリアルショップでもカタログを販売されていますが、最初はECサイトだけで販売されていたのですね。ECサイトにはどのように集客をしたのでしょうか?

西村:実は集客のことはまったく考えていませんでした。サイトを立ち上げれば人が訪れて、冗談ではなく、回線がパンクするのではないかと心配していました。でも、当然そんなことはなく(笑)。その後も「これをやったら、うまくいきました」ということはひとつもなく、結局なぜ事業が伸びてこられたのかはよくわかっていません。ただ、ひとつ言えるのは、メディアに取り上げてもらう機会には創業当初から比較的恵まれていました。そういうことが巡り巡って、少しずつユーザーが増えているのだと思います。

――ECサイトでの販売にあたって、工夫したことや苦労したことはありますか?

西村:最初はそもそも「体験ギフト」という名前すらなくて、僕らはずっと「エクスペリエンス・ギフト」と呼んでいたんですね。僕らとしても「エクスペリエンス・ギフト」という呼び方はわかりにくいと自覚していて、実際に説明もしにくかったのですが、当時はそれに代わるふさわしい名前が見つけられませんでした。ところがある日、僕らを取材してくれた日経新聞の記者の方が記事で僕らのギフトを「体験ギフト」と表現してくれて、「これだ!」と。そんな風に言葉を作ることから試行錯誤していました。また、次第に競合他社が登場してくると、カタログの体験プランがいかに充実しているかを各社競うようになります。そうしたなかで、当社は体験「プラン」が150種類と表現しているところを、他社は体験プランのさらにレイヤーが下の「コース」が2,000コースと表現して規模を大きく見せていることに気づいたりもしました。僕らは「プラン」と「コース」の違いがわかりますが、お客様はわからないので、数字が大きい方がよいと思ってしまいます。ですから、それらを随時チェックして、言葉の表現で劣って見えない工夫なども細かくしています。


後編では、ソウ・エクスペリエンスの運用面やギフトという枠にとらわれない事業展開など、今後の方向性についてお聞きします。

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