一風変わった物件やリノベーション前提の物件など、これまでの賃貸情報サイトにはなかった新しい視点で不動産を紹介する人気サイト「Real Tokyo Estate/ 東京R不動産」。インタビュー後編では、同サイトを運営する株式会社スピークの代表・吉里裕也氏と同社の三箇山氏に「東京R不動産」から派生した物件DIY系ECサイト「R不動産toolbox」と、他にないユニークな商品を扱う異端ともいえるセレクトショップ「密買東京」についてお話をお聞きしました。

つくり手の理想と、お客さんのニーズ、その両方からECサイトを作っている

――物件をDIYする人たち向けのECサイト「R不動産toolbox」は、住環境に対するユーザー意識の高まりを受け、ニーズ主導でつくったサービスなのでしょうか?

吉里:我々にはサービス提供者そしてつくり手として「半歩先はこうしたい」「こうなったらいいな」という目標やねらいや理想があります。そして、もちろんお客さんからのニーズもある。その両方のバランスですね。今は空間をつくる"編集権"の主体が、物件の建築家やデザイナーではなく住まい手に移ってきているように感じます。そこで何が必要かというと、建材や照明といった、家具と内装の中間のようなもの。だから、我々はそれを提供したいと思いました。

僕らから見ると、今の建売や分譲住宅のあり方は貧相だと思っています。具体的には、使われている素材自体の質が貧相なんです。たとえば、壁紙がビニールクロスだったり、フローリングでも傷つかないようにコーティングが厚く塗られていたり、下手をすれば床自体もビニールクロスだったりする。これはデベロッパーやゼネコン、施工業者がクレームを受けたくない、という考え方からそうした傷つかない素材を使うようになるんです。住居というのは高い買い物ですので、ちょっと傷があればそれが深刻なクレームになりがちです。だから、それをなるべく少なくするためにどんどん分厚いワックスやビニールクロスを使う。でも、住まい手として考えれば、高いお金を出してそういう住居に住むのは馬鹿らしくもありますよね。だから、僕らはそういう意識を変えたいと常に思っています。

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――「R不動産toolbox」を利用されているユーザーにはどのような方が多いのでしょうか?

吉里:対面ではなくECなのでちゃんと見えないというのが正直なところです。というのも、施工会社を通して、「R不動産toolbox」を指名して買われているお客さんも多いように思えるからです。もちろんR不動産で物件を借りてR不動産toolboxで建材を購入される方もいます。それと、本当はR不動産的な物件が欲しかったけど、いろいろな条件から通常の建売住宅を購入された。でも使われているクロスが嫌だから床や壁だけ変えたい、という要望で購入されているお客さんもいらっしゃるように思えますね。

――「R不動産toolbox」コンテンツのこだわりを教えてください。

吉里:当初は一手間が必要なもの、具体的にはAmazonで買えないような導入に際して工事が必要なものや寸法とかがカスタムオーダーできるようなものを扱うようにしていました。うちにはそれを取り付ける業者等のネットワークがありますので。でも、試しに工事が必要じゃない照明とかを出してみたら、これが結構売れたのです(笑)だから、今はあまりこだわらずに色々試している段階ですね。

――「R不動産toolbox」のほか、どこから見つけてきたのだろうという特徴的な商品が多数並ぶECサイトとして「密買東京」も運営されているようですが、この「密買東京」はどういった経緯で始められたのでしょうか?

「密買東京」の最終目標は「伝説作り」

三箇山:6~7年くらい前、R不動産が軌道に乗ってきた時に多少の不満が出てきたのが最初のきっかけです。その不満自体は、「同じ商品が何個もあればいいのに」という、不動産の特性上どうしようもないものだったりもするのですが(笑)それと同時に、R不動産を運営していると、メディアを通して変な人にたくさん出会うんです。芸能系の方や、何かしらもの作っている人、アーティストなどなど。物件を扱っているサイトなので、現地確認などを当然行いますよね。するといろんな人と当たり前のように会うことになるのですが、変な部屋を探している方々には変わった人が多いんです。いろんな年代や収入の方がいますが、基本的な趣味嗜好は近くて、コミュニケーションが弾むんですよ。「今度引っ越しパーティーするから来て」と言われて、行ってみると変な人が作った家具があったりする。するとまた話が弾むという(笑)そうして自然とおもしろいものを仕入れるルートができてきて、「じゃあお店始めたらいいんじゃないか」となったのです。
(※株式会社スピークの広報と密買東京の担当をしている三箇山さん)

吉里:仕方ないことなのですが、R不動産も事業が拡大していったことで、ユーザーさんとのコミュニケーションも多少薄まってしまったところがあります。今でも普通の不動産屋に比べると遥かに濃いですが、当初はお客さんと全員友達みたいな感じだったんですよ。

三箇山:密買東京は買ってくれたお客さんに納品書の代わりに手書きの手紙を入れています。納品書じゃなく手紙だと返事が来たりするんですよ。

――「密買東京」は運営が株式会社スピークではなく株式会社ハイライドとなっていますが、これはどういったことなのでしょうか?

吉里:R不動産の組織のあり方として、プロジェクトごとに独立したベンチャーが立ち上がればいいなと思っているんです。その第1号がハイライドで、R不動産が出資しています。

三箇山:コンテンツというかたちがないものを扱っているからこそ、所有権という概念がグズグズになってしまうのは良くない、というのがR不動産の風土的にあったんですね。あるビジネスを会社内で立ち上げようとしたときに「でも自分はこれのために給料もらってないし...」みたいなのは良くないので(笑)大きなパワーを割いて立ち上げたのであれば、その所有権を確保すべきだということですね。

吉里:変に組織をピラミッド化すると硬直しがちなので、やりたい人が楽しんでやれるのが一番なんです。責任も増えるけどリターンもある、という基本的なことです。

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――ところで率直な疑問として「密買東京」はかなりニッチな商品を扱っていますが、ビジネスとして成り立っているのでしょうか?

三箇山:成り立たないですね。アート活動だと思ってます(笑)

成り立つようにしようかという話もあったんですけど、最終的には「伝説にしよう」ということになりました(笑)伝説になればお金になることが後から生まれてくるんじゃないか、と。だから「とりあえず伝説を作ろう」という話で今は動いています。

――「東京R不動産」「R不動産toolbox」「密買東京」と、どれも広い意味でECサイトと言えると思います。今後、新しい時代の買い物や買い方はどう変わると思われますか?

吉里:不動産を主軸に考えると、C2Cに近づいていくだろうなというのが一般的な展望としてあります。そこでは、「共有感」や「一緒に作っていく感じ」が重要になってくると思います。極端に言えば「R不動産toolbox」を使って建材を買ってDIYをしても、仕上がりがかっこよくなくても良いんです。みんなで床を打ったとか、ペンキを塗った、という行動や結果それ自体が価値になってくる。最近、ローカルが盛り上がっているのも、その距離感が近いからなのかなと思います。ECサイトとしては、ネットでそういうリアルとどう近づくかが重要じゃないでしょうか。僕らはリアルなものを扱っていますので、今後も何かしら人の手が介在することをやっていくんだろうなと思います。

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