ファッションコーディネートを投稿するだけでなく、人のコーデにコメントしたり、引用したアイテムを提携ECサイトから即座に購入したりもできる利便性の高さから、若い女性の支持を集めるアプリ「iQON」。インタビュー後編では、当サイトを運営する株式会社VASILYコンサルタント・横山隆氏に、VASILYの魅力や「iQON」の将来の展望などについてお話を伺いました。

――横山さんご自身が、VASILYに参画されたいきさつや、魅力を感じた点を教えてください。

1つ目は、ものすごい量のデータをビジネスにできると金山社長から教えてもらったことです。2つ目は、多くの日本有数のファッションブランドと直接取引ができること。3つ目は会社の方向性のひとつにO2Oが含まれていたこと。僕は「ECサイトの運営で、ECサイトだけ見ていてはダメだ。O2Oは必須になるはずだ。」と考えていたのですが、その一方で、「1社のECサイトの運営となると、携われる領域が限られる場合もある」とも感じていました。その点VASILYなら、いろいろな会社に話を提案できる立ち位置でO2Oビジネスができそうだと感じたんです。

そして最終的な決め手は、「みんないいやつだな。一緒に働いてみたいな。」と思えたことですね(笑)。

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――やはりVASILYのみなさんはファッションがお好きなんですか?

いや、そんなことはないです(笑)。自社事で恐縮ですが、ファッションに関してだけでなく技術面においてもかなり優れた会社なので、そこに魅力を感じて入ってきている人もいます。

――ファッションに詳しくない社員だと、「iQON」については感覚的に理解が難しい面もあるのでは?

全員がファッションのことを知らなくても、ディレクターが詳しいから大丈夫...というように、基本はチーム単位でバランスを取っています。元ファッション誌編集者や元ファッションデザイナーもいるので、うまく社内でコラボレーションしていますよ。

――ここからは「iQON」の将来への展望についてもお話を伺えればと思います。膨大なデータがあるところが魅力とおっしゃっていましたが、そのデータを生かして、今後ユーザーごとにパーソナライズをしていこうというお考えはありますか?

あります。例えばLIKEしたアイテムやブランド、購入したものの情報など、たくさんのデータがありますから、それらのデータや、もっと言うとクリックしたデータまですべてを使ったパーソナライズは、ユーザーさんを喜ばせるために行っていきたいですね。

あとは最近話題の「Apple Music」のように、自分の好きなものを選んでおくと、他に好きそうなものが出てくる...俗に言うレコメンドエンジンみたいなものもやりたいなと思っています。やっぱりユーザーさんが自分でアクションしたということは、それなりに興味が高いということだと証明されていますから。実際「iQON」でも、LIKEしたアイテムをそのまま買っている人も多いです。

ただ、アイテム単位でLIKEしているのは本当に欲しいものなんですけど、ブランド単位でのLIKEには憧れが入る。実際は買わないブランドでもLIKEするんです。なので、ブランドへのLIKEと実際の購入率には、あまり相関がなかったりするのは一つ面白いポイントですね。

――個人を重視するパーソナライズの一方で、ユーザー同士のつながりを重視するSNS的な要素についてはいかがでしょうか。これから力を注いでいきたいというお考えは?

やっていくとは思いますが、そこだけに注力するという感じではないです。SNSサービスはヘビーユーザーさんありきで成り立つと思います。その一方で、SNS的な情報発信をしない、見ているだけの人たちもすごく重要だと思います。両方の人たちにちゃんと興味を持ってもらえるような価値を設定していきたい。「コーデを作る人はこんなふうに幸せになれる」「見ている人はこんなふうに幸せになれる」というところを明確に見せていきたいという気持ちがあります。コーデを作る人を増やすための施策も行ってはいますが、そこに振り切ることもないかもしれません。

――ヘビーユーザーだけでなく、ライトユーザーも大切にしながら、それぞれにとって新たな価値を創出していきたいということですね。

うちの会社のコンセプトは「人類の進化に貢献しよう」ですから、どんなユーザーさんでもみんなに喜んでもらえるようにしたいですね。5~6年前くらいまでは、各ブランドそれぞれに「うちのブランドとあのブランドを交ぜてコーディネートするなんてありえない!」という意識があり、それが理由で「iQON」の提携先ブランドを広げるのはかなり大変でしたが、洋服をバーチャル上で自由気ままに組み合わせることをユーザーさんが楽しんでくれるというところに、ブランドの理解も徐々に得られるようになって、今ではブランドからのクレームなども全然なくなりました。こんなふうに、「いろいろなブランドをユーザーさんが組み合わせて見せる」という、今までできなかったことができるようになったのは、人類の進化の1つですよね。

あとは、LIKEしておくだけで、セールや新商品の情報をスマホ1つで随時知ることができるようになったのも、それまでできなかったこと。厳密にはわかりませんが、おそらく「iQON」が最初に始めたことなんじゃないかな?

また次にどういう人類の進化に貢献できるか考えると、例えば自分が買ったアイテムのコーディネート例が随時届くようなものだったり、放っておいても「そうそう、こういうものが欲しかった!」というアイテムが自動的にレコメンドされるものだったりを考えています。

一方、洋服という商品の特性上、今後ECサイトが普及しても、オンラインのシェア率は40~50%がマックスだと考えているので、やはりオフラインは見過ごせない領域です。なので、「iQON」で全店舗のポイントカードを横串で管理できる...といったこともできるようになったらいいですね。今は、いろいろな店舗のカードを1枚ずつ管理しなければならないという面倒な世の中ですが、それを「iQON」が全部パッケージしてあげられれば、さらに人類の進化に貢献できるなぁと。そういう類のものを考えて、仕込んでいくのが、次にやっていきたいフェーズです。

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――だとすると、アプリ内に実店舗の住所や電話番号などが載っているのも、「iQONを利用して洋服を買ってほしい」という思いより、「ファッション業界全体の進化に貢献したい」という思いが強いからなのでしょうか?

そうです。それに加えて「iQON」では、全部の物事を「ユーザーさんにとってプラスかマイナスか」という面で見ています。

ユーザーさんには「試着したい」とか「店舗が近くにあるからすぐ行きたい」という要望があるので、住所や電話番号がしっかり載っていて、電話で「今この商品を見たんですけど、お店にありますか?」と聞けたほうが便利。ユーザーさんが、「洋服を探すときにはiQONが一番便利」と思って喜んでくれる方が嬉しいという軸でやっています。

――「iQON」を使っていても、まだオンラインで洋服を買うことには抵抗があるユーザーも多いということでしょうか。

「欲しいアイテムを見つけたあと、どうしましたか?」というアンケートによると、「店に行って買った」という人が50%以上でしたね。理由はやっぱり「試着したい」「素材を見たい」など。

――「iQON」は日本ではかなり人気が出ていますが、海外展開は視野に入れていますか?

やるつもりはあります。でも、日本のユーザーさんに対してやるべきことをまだやれていない状態なので、それをやってからですね。お声がけはたくさんいただくのですが、日本でまだ100%やりきっていない。この状態で横展開すると、今抱えている問題がそのまま増えるだけだと考えていますので。

――ユーザーからの要望やリクエストはいろいろ届くのでしょうか? それを実際に反映した事例などがあれば教えてください。

要望はたくさん来るので、それに対応する専任担当者がいます。

具体的な過去の事例としては、以前、「iQON」歴の長いヘビーユーザーさんから「最近のiQONにはガッカリしています」というお叱りのご意見をいただき、いろいろ教えていただいたことがありました。その中に「新しい商品が増えないじゃないですか」という意見があって、「なるほど!」と思い、とにかくブランド数を増やしました。今まで取り扱っていなかったアイテムも見られるようになったことで、ユーザーさんの反応もよくなってきました。新商品が少なかったという問題は、ユーザーさんの声を聞いて気づいた事例です。

――現在ではもうかなり多くのブランドやアイテムを扱っていますが、今後の商品展開については、何か展望はあるのでしょうか。

今、知名度のあるブランドはほぼ全部入っている一方で、まだ知名度がない新進気鋭のブランドなどが好きな人も絶対いると思うので、元々有名なブランドのデザイナーだった人物が立ち上げた新ブランドなどは、ゆくゆく入れていきたいと思います。

――では、アパレル以外のものを扱っていく可能性は?

最近になってコスメを扱い始めました。『VOCE』『ViVi』『with』などの中にコスメを紹介している記事があって、そこから商品ページに行けます。今まで雑誌ではできなかったことというのは、見たものをそのまま買うこと。「iQON」ではこれが実現できています。

商品数量的にはまだ少ないですが、インテリアもちょこちょこ入れ始めていますし、スポーツブランドの商品を入れたりもしていますね。例えばスノボスタイルとかサーフィンスタイルとかも、スポーツブランドがあればコーデが作れて楽しいだろうなぁというところを狙って。

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――最後の質問です。「新しい時代の買い物、新しい時代の買い方」とはどのようなものになっていくとお考えですか?

うーん...。さきほども少し触れましたが、究極的には、「何も考えなくても欲しいものが出てきて、自動的に買えちゃう」という、人類がどんどん考えなくなる仕組みができるのかなぁ...と。これからもっとテクノロジーが進化して、レコメンドエンジンの精度も上がってくるでしょう。だから「私、1回も黒いワンピースは検索してないのに、なんで欲しいってわかったの!?」みたいな、ちょっと怖くなるようなことも起こりそうですよね。1回見たものを認識して、どんどん追い回されるリマーケティングとかもすでに怖いですけど、ああいう「怖いくらいのターゲティング」というのが進化して、未来予測的なところまで行くと思いますよ。「そろそろパンがなくなりそうじゃない?」って、パンの購入画面を勧めてくるみたいな(笑)。

もう1つはありきたりですが、オムニチャネルは絶対に進むと思います。ユーザーさんからすると、ネットで買っても店で買ってもどちらでもいいのに、企業側の都合で購入チャネルをどちらかに選択させるオムニチャネルになることが多いと思います。なので、実店舗で買ったものを使ったコーディネートがメルマガで届くとか、そこにリンクが貼られていてECショップにもすぐ行けるというように、「引き続き実店舗に行くのもいいし、たまにはECショップに行ってみてもいいじゃん」という、もっとナチュラルなコミュニケーションがいずれはできるでしょう。これはあと5年もかからないと思います。

これは「iQON」が目指すところでもあって、ブランドの都合にかかわらず、ユーザーさんが便利になればいいんです。よくある話として、ファッションブランドの多くは、実店舗とECショップで予算をそれぞれ持っているので、実店舗からすると、ECショップが盛り上がって在庫を持っていかれたりすると困る。なので、実店舗でECショップのことを紹介する...というのはなかなか行われなかったりします。そういった慣例に対し、第三者である「iQON」が入っていって「それじゃダメですよ」と提案し、KPIを統一化できればと思っています。

メディアという中立性を使って、時には空気を読まずに、「それじゃ損しますよ」と言いながら、各社それぞれの異なる悩みに対して、「お客さんからしたら、どこでも買えるようになるとすごく便利じゃないですか!」という方向性に持っていく提案の仕方をしていきたいですね。

――ありがとうございました。

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