生産者とお客様を直接つなぎ、野菜をはじめとした旬の食材を新鮮なうちにお届けする、クックパッドの定期宅配サービス「クックパッド産地直送便」。その運営に携わるクックパッド産地直送便株式会社 西崎努氏のインタビュー後編では、インターネットやパソコンに触れたことがないという人も少なくない生産者との二人三脚の運用状況や、今後の展望について伺いました。

「ジャガイモを2キロぐらい入れていいか」「それは待ってください」と(笑)

――現在、お取引されている生産者様の数を教えてください。

出店店舗数でいいますと、今日の段階(2015年11月19日時点)で52店舗です。作物によって収穫のシーズンが異なり、収穫ができない季節は出店をお休みする生産者様もいらっしゃるので、日々出店数は変わります。

――生産者様の新規開拓はどのように行っているのでしょうか。

弊社が情報を集めて探したり、ご紹介を受けてお会いしたりするほか、生産者様からの応募も受け付けています。

――お取引されている生産者様は、ECを自ら運営していたり、他店にも出店されている方が多いのでしょうか?

どちらかといえば少ないです。弊社は、いい野菜を作って、とにかくみんなに食べてもらいたいという情熱がある生産者様とお取引をしたいので、インターネットやWEBのリテラシーは問いません。「インターネットやパソコンを使ったことがないけれど大丈夫ですか?」という問い合わせをいただきますが、弊社は「ぜひ」とお答えします。そのような方には、どんなパソコンを買ったらよいかから、プリンターの使い方まで、すべてお教えします。日々運営していただくのは生産者様ご自身なので、私たちは「一緒にがんばりましょう。いつでも電話ください」とサポートを徹底しています。

――御社で管理用のCMSを用意して、生産者様が入力していくという仕組みですか?

そうです。弊社は決済代行サービスとしてお客様から注文を受けて生産者様にお渡ししています。それ以外の生産から商品登録、出荷までを生産者様ご自身でやっていただきます。

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――生産者様には、説明文や写真など、サイト上での見せ方のアドバイスをされますか?

はい、同梱物の助言、写真の撮り方まで、すべて行います。まず、お取引開始時に、週の出荷量の調整から、WEB上でどのように見せていくかなどを記載したマニュアルをお渡しします。出店当初は密にコミュニケーションを取り、写真のアドバイスなど、このような準備はできていますか?と、細かくご提案をさせていただいています。撮影は基本的にご自身で撮影いただきますが、それが難しいという場合はこちらで撮影することもあります。当社で撮影する場合も無償で行っています。

――バックアップが手厚いですね。それなら、今までネットショップなどに縁のなかった生産者様も出店しようという気持ちになりそうです。

生産者様も大変だと思います。慣れないことをして、思いどおりに売れなかったり、逆に予想以上に売れてしまったり。そうした苦労をしながらも続けていらっしゃる生産者様は、本当に自分の野菜、作物を食べてもらいたいという情熱があり、経営者としての志の高さを日々感じています。

――そのような生産者様からはどのような声が届いていますか?

日本全国のお客様に購入いただき、新しいお客様との出会いが楽しい。また、お客様からの意見を直接もらえることが非常にうれしいという声が多いです。生産者様のモチベーションのアップにつながっていると思います。

――お客様と生産者様の間に立ち、苦労する点はありますか?

日々生産者様とやり取りをしていると、どうしても生産者様側の目線になりがちです。生産者様からのご要望についても、それが本当にお客様のためなのかを考えて、生産者様と相談します。また、生産者様には、鮮度よく品質よく、きれいに梱包して出荷しましょう、出荷日は必ず守ってくださいと、徹底してお願いしています。

――生産者様からはどのような要望がありますか?

生産者様によって、ご要望はさまざまです。弊社の発送は年間を通してクール便を利用していますが、生産者様によっては、この時期は常温にしたいなど、いろんなこだわりがあります。あとは野菜の種類ですね。この時期はたくさん取れないので、例えばジャガイモを2キロぐらい入れていいか、とか。それはちょっと待ってください、と(笑)。それであれば、少しお休みしましょうとご提案をさせていただくこともあります。

――御社のスタッフブログでも、生産者様を取材して紹介されていますね。みずみずしい農作物の写真やスタッフさんのコメントから、美味しさの感動がダイレクトに伝わってきます。

旬の食材のご紹介や、新店舗のご紹介を主にしていて、すべて生産者様のもとに直接取材に伺っています。ときには、ちょっと珍しい畑の体験をしました、などのレポートをお届けすることもあります。カスタマーサポート以外のスタッフは、毎日のように生産者様に会いに全国を飛び回っています。

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――最近はどちらに行かれましたか?

九州に行って、ジビエ料理にするための鹿を見に行きました。それから、漁師さんと一緒に船に乗って漁を取材したことも。また、有機農法を行っている農家さんに取材に行って、草刈りを一緒にしたこともあります。

――実際に生産現場をご覧になって、ご自身の意識は変わりましたか?

ガラッと変わりました。消費者側だけでなく生産者側の視点も得て、このように手をかけられたものをなんとかして食べてもらいたい、という思いがより強くなりました。また、私は前職で飲食店の経営に携わっていたのですが、その頃は産地直送の食材が欲しくても手に入らない状況でしたので、今の仕事を通じて産地直送の鮮度の良さや、商品のバラエティーの豊富さがもっと広がっていけばいいなと感じています。やっぱり違いますね、素材のおいしさが。

――先頃日本のTPP参加が決定しました。生産者様の意識にも変化があるのではと思いますが、実感することはありますか?

感じますね。生産者様からこれからはもっと厳しい時代になる、ほかの農家さんはどうやって売上をあげていますか?と質問を受けることも多いです。実際に、生産者様のもとに伺うと、その方から、近所の同業者をご紹介されることが多いんです。「何々さんのところへも、ちょっと行ってやってくれ」みたいに。皆さん地元を盛り上げようという意識が高いので、これからももっと増えそうな気がしています。

――今後ラインナップをどのように拡大したいと考えていますか?

売れた、売れないより、生産者様あっての取り組みなので、よく社内で論議になるのが「あまり、商品中心になってはいけない」ということです。生産者様がどのような思いで何をどうやって作っているかにこだわって商品化しようと思っています。日本全国の特産品を扱いたいという気持ちはありますが、加えて、そこに想いがあふれている生産者様がいればという条件がつきます。ですから、「あの大根がいいらしいから、それを取り扱おう」といった断片的なものではなく、「出店していただく以上は頑張って継続していきましょう」ということを生産者様とお話ししています。期待していただいているお客様が大勢いらっしゃるので、「一緒にお客様の期待に応えていきましょう」と密にコミュニケーションを取っています。

――それぐらい続けるのは難しいということですか?

大変だと思います。「野菜がない、野菜がない」と、年間の半分ぐらいはそうした悩みを聞きます。それでもなんとか自分たちで工夫して、「畑のこの一反分はクックパッドさん用にとっておく」などといった話を聞くとやっぱりうれしいですね。そのような生産者様の努力や想いをいつも感じています。

――「クックパッド産地直送便」を始めてよかったと思ったこと、手ごたえを感じたことはありますか?

生産者様に、自分が生産したものが世に出ることにとても感謝していただけたときは、やっていてよかったなと思います。また、お客様からの「すごくおいしかったです」という感想を伝えたときの農家さんの笑顔が忘れられないですね。それが「クックパッド産地直送便」のサービスそのものだと感じています。取材では、怖い思いもする事があります(笑)。どこにつながっているかわからない山道をひとりで延々と歩いて心細くなったり、ここで遭難したら労災になるかなと不安になったり。そんななかで、素晴らしい生産者様や、おいしい食材、珍しい食材に出会えたときの感動はひとしおです。

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――クックパッド全体における、「クックパッド産地直送便」の役割を教えてください。

クックパッド全体として、「料理を楽しく」というテーマを掲げています。そのなかで、「クックパッド産地直送便」としては、「日本全国のおいしい食材で、食卓を楽しく幸せにすること」、そして「生産者様の思いやこだわりを知ることで、より食材に対する知識が深まり、それが話題になることで食卓が明るくなること」を目指していきたいと思っています。生産者様が、より楽しく生産していただける仕組みを作りつつ、お客様がそれらを手軽に選べるサービスにこだわりたいですね。

――「クックパッド産地直送便」の今後の展望についてお聞かせください。

今ある小売店さんの生鮮食品がすべてではなく、インターネット上で生産者から直接買える「クックパッド産地直送便」のようなサービスがお客様の選択肢のひとつとして認知され、生活者の食卓が豊かになればいいなと思っています。

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