「ローカルは楽しい! ローカルはカッコいい! ローカルは進化している!」をテーマに、日本全国のいいモノ、こと、人、ストーリー、ニュースを集めて配信する、マガジンハウス運営のWebメディア「コロカル」。その「コロカル」から、2013年12月にECサイト「コロカル商店」が誕生し、地方のご当地グルメや人気スイーツ、雑貨などを「モノづくりのストーリー」とともに届けるサイトとして話題になっています。そこで、「コロカル」の編集長を務める及川卓也氏にWebメディアを立ち上げたきっかけや、ECサイト運営開始にいたるまでのお話をうかがいました。

及川卓也氏「コロカル」編集長及川氏

ストーリーを伝えるだけでなく、人とモノを動かすメディアへ

――「コロカル商店」はWebマガジン「コロカル」のECサイトとして展開されています。双方を統括する及川さんのご経歴と、どういった経緯で「コロカル」を生み出されたのかをお聞かせください。

Webマガジン「コロカル」

日本の「地域」をテーマにしたWebマガジン「コロカル」

及川:僕は20年ほど『anan』編集部に在籍して編集長を経験した後、企業の紙媒体の制作を受託するカスタム事業部に配属になりました。その頃、出版社はどこもデジタルコンテンツに関するビジネスをどう作り上げていくかが問われていましたが、当社としてはコミックがないなどといった問題もあり、電子雑誌や書籍の販売で、すぐにマネタイズをはかるのが難しい状況でした。
そこで、カスタム事業部での経験から、クライアントのWebサイト制作を受託しながらデジタルで自社のコンテンツビジネスを立ち上げることに決め、デジタル事業部を新たに発足しました。そして、そのデジタル事業部で「マガジンハウスらしくトライできる新しいWebマガジンとは何か?」と考えた結果、2012年1月に日本の地域をテーマにした「コロカル」を立ち上げました。

日本の地域をテーマにするというのは、マガジンハウスがそれまでにやってきた、海外のライフスタイルやファッションをいち早く日本に紹介するということとは表面的には方向性が違うように思われるのですが、根底に時代の気分を反映している点では共通していると思っています。海外や都市の文化にも魅力的なものはまだたくさんあるわけですが、それと同等にローカルの文化やコミュニティのつながりやローカル発のmade in japanへの興味関心も高いと思います。「コロカル」では、今の時代の気分として、消費型ではないものを目指そうと思いました。例えば地方はシャッター通り商店街が増えていたり、ロードサイドはどこも同じような景色だったり、あるいは高齢化だったり、課題がたくさんありますよね? 僕もマクロの視点で見ていたときは「どこも大変だな、しんどいな」と思っていたのですが、クリエイターの中には地域・地方に入ってプロジェクトを起こしたり、カフェを始めたり、地域に移住して今までとは違うライフスタイルを選ぶ先進的な意識を持つ人たちが増えてきました。

都市型の非常に高度に分業化された社会――それはそれで僕らは否定しないし、素晴らしさもあると思いますが、それとは違う場所で、ひとりでいろんなことをやってみて、たくさんは儲からないかもしれないけれども、その場所で新しい生き方を見つけるという選択肢もあるのではないかと考えたんですね。

――「コロカル」のアイディアはいつ頃からあったのでしょうか?

及川:「コロカル」を始める前に、岡山のある企業からの依頼で、岡山の魅力を岡山の人に伝えるムックを制作しました。

ハナコおかやま『ハナコおかやま』

そのときに岡山で、おもしろい生き方や、新しいお店、新しいデザインに出会いました。「これはもしかしたら全国で同じことが起こっているんじゃないのかな」という予感がして、地域を見つめなおしてみたら、いろんな方がいました。それなら、地域というテーマでさまざまな「新しい実践」を集合させたら何らかの価値あるメディアができるんじゃないかと思ったのが、「コロカル」が始まる2、3年前ぐらいかな。そういうことを考えているときに東日本大震災があって「これは東北の復興も含めてちゃんとやらなきゃいけないな」と考えました。そこからビジネスになるかも含めて社内で協議し、企画を詰めていって2012年にやっと立ち上げられました。

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2012年に立ち上がったコロカル商店

――「コロカル」の立ち上げ時点で、「コロカル商店」の構想はすでにあったのですか?

及川:できればいいとは思っていましたが、具体的な事業計画としては想定していなかったですね。Webメディアを始めればECサイトは当然考えますが、当時は我々に経験がなく、ロジスティックなども未知だったので。ただ、「コロカル」の目的は「地域で起こっている新しいことをストーリーとして伝えること」なのですが、地域の方々からは「ストーリーだけでなくもう少し具体的な成果がほしい」という声もありました。たとえば観光振興なら、素晴らしい場所がありますよという紹介だけでなく、そこへ行くための旅行の申し込みができるとか。我々スタッフとしても、単にストーリーを伝えるだけでなく、人を動かすメディア、モノを動かすメディアになっていかなきゃいけないなという想いが強くなってきて、その中で生まれたのがECサイトや旅行の申込フォームでした。

コロカルトラベル鳥取鳥取の温泉旅を提案するコロカルトラベル鳥取

――出版とは異なる業種のECサイトを立ち上げるにあたって、先ほどおっしゃったようにロジスティックや経験の問題に直面したかと思いますが、具体的にどのように進められましたか?

及川:まずは、どこかパートナーを探すしかないと思って、さまざまな申し込みをいただくなかで、カタログギフト最大手のリンベルさんとの共同運営を選択しました。リンベルさんは今までも雑誌・メディアと組んだ通販事業を行なっていて、タスクがきっぱり分かれているんですね。メディア側は商品を選定してプロモーションをする、リンベルさん側は、流通システムや決済システムがあり、MDがいらっしゃるので、こちらが選んだものを交渉して商品にラインナップし、販売・配送する。すごくタスクがはっきりした組み立てだったので、これならご一緒できると思いました。

――御社では商品の選定と、その見せ方を担っているということでしょうか?

及川:そうですね。作り手側のメーカーを取材したり、商品を撮影してコンテンツ化していくということ、それをプロモーションしていくことが我々のタスクになっています。

―― 「コロカル商店」の立ち上げ時点では、すでにEC市場は成熟していると言われており、出版社が運営するECサイトとしても後発だったと思います。そのなかで、どのように独自性を出し、マネタイズをしていこうと考えていますか?

及川:その点は、理想を追求するとマネタイズから遠ざかるという矛盾を抱えています。「コロカル商店」は地域のいい作り手のものを取り上げて、それが消費者の元に届いて、販売の利益が地域の小さな事業者に回っていくということが理想なので、売れ線を狙って商品選定をするスタンスではありません。ですから、商業的な効率という意味ではなかなか厳しいところがあるのかもしれないなと思っています。

「地方のいいものがこんなにあるんだよ」とラインナップしていくうちに、「あ、こういうものを買っていこう」とか「こういうものが欲しい」というお客様が増えていけばいいなと思っていますが、まだまだ不慣れでサイトの構造に関しても改善点がたくさんあります。商品もすぐに動くものもあれば、まったく動かないものもあり。せっかくラインナップしたのに売れないと、地方のメーカーさんも喜んでくれないでしょうし心苦しいです。

後編では、地方の知られざる商品との出会いや、今後の展開についてお聞きします。

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