越境と国内のプレイヤーがシェア争いを繰り広げる現在のベトナムのEコマース市場。その最新の動向と、覇権争いを左右する鍵を考察する。

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ベトナムの風景(Ⓒ Eric Wienke 2014)

市場から見える高いポテンシャル

ベトナムの電子取引IT庁「VECITA」(Vietnam E-commerce and Information Technology Agency) が発表したEコマース市場に関する調査レポートによると、ベトナム国内のBtoC取引の総額は、2012年には7億ドルだったのに対し、2014年は約30億ドル。2015年は40億ドルに達する見込みで、さらに2019年には75億ドルに上ると急成長が予測されている。

ベトナムはインドネシア、フィリピンに続き、東南アジアで3番目に人口が多い国であるが、インターネット普及率はそのなかでも首位。統計ポータルサイト「Statista」によると、2015年時点のネット普及率は総人口9,070万人のうち約44%。東南アジア全体の平均40%を上回っている。

Eコマース市場は現時点では周辺諸国と比して大きいとは言い難いが、これまでの市場の伸び率、それを支えるネットの普及状況などを踏まえると、ポテンシャルが高いことは間違いないだろう。

そんなベトナムで2014年、ネット上でもっともさかんに取引された商品カテゴリーは「電化製品」と「衣料品・化粧品」。「電化製品」は、2013年では全カテゴリーの32%だったのに対し、2014年には60%とジャンプアップ。一方「衣料品・化粧品」は2013年も60%台であったため大きな変動は無いが、ネットで買うものとしてすっかり定着したようである。

代表的なEコマースサービスは、「Lazada」や「Zalora」など越境Eコマースと、「Sendo.vn」(以下、「Sendo」)など国内のEコマースサイトに大別される。前出の「VECITA」によると、2014年に市場でもっとも大きなシェアを占めたのは「Lazada」で、全体の21%。続いて、「Sendo」が10%だった。


越境ECと国内ECがせめぎ合うベトナムのEC市場

代表的な地場のオンラインマーケットプレイスである「Sendo」は、出店数5,300店、商品数は10万点以上。2011年にベトナム最大のIT企業、FPT Corporationが設立した合弁会社 Sendo Joint Stock Companyが運営。2014年7月に、国内2番手の「123mua.vn」を買収した。伸び率を2013年と2014年とで比較したところ、取引数は倍増、取引総額も45%増と順調に成長している。

一方、ベトナムで圧倒的なシェアを誇るのが、先述の越境Eコマースである「Lazada」。2012年にシンガポールに本社を設立し、"東南アジアのAmazon" を目指している。家電から生活用品まで幅広いラインナップの商品を東南アジア各国で取り扱っている。

画像2_.pngベトナム版「Lazada」。生活用品からオートバイまで幅広く扱う

「Lazada」がベトナムに参入したのは2013年の中旬。その当時、ベトナムにはすでに「Sendo」をはじめ、国内のサービスが存在していたが、ブランド力と他国で培ったノウハウを強みに、開始からたった1年で国内シェア1位に躍り出た。2014年末時点でのユーザー数は約50万人、出店数は1,500店舗。同年には、シンガポールやスウェーデンの投資ファンドから2億5000万ドルの資金を調達した。

「Lazada」がこれほどまでに短期間で圧倒的な成果を上げた要因は、顧客からの信頼を勝ち得たことにある。


サイトとデリバリーの分業が奏功

ベトナムのEコマース市場の長年の課題は、売り手と買い手のお互いの信頼性の低さだった。ベトナムでは総人口の20%しか銀行口座を持っていないため、支払い方法は代金引換が主流となっている。しかし、Eコマース側が代金引換に対応していなかったり、商品が指定した期日に配達されないことが理由で、顧客側が注文をキャンセルすることも多くあった。

こうした問題に対応すべく「Lazada」がまず取り組んだのは、他国で培ったノウハウを生かした独自のインフラ構築だ。同社の傘下にあるデリバリー専門企業「Lazada Express」と連携し、支払いと配達のオペレーションを改善。その結果、オンタイム配送を実現し、代金引換にもいち早く対応。顧客に利便性を提供するとともに、Eコマースサイトとしての信頼を獲得することに成功した。

この信頼獲得に失敗したEコマース関連サービスが、2012年は月間1億ページビューにまで伸ばし、最もポピュラーなEコマースサービスであった地場の価格比較サイト「Vatagia」だった。商品の価格を掲載し、顧客をリアル店舗へ集客するかたちを取っていたが、実際に利用したユーザーからはリアル店舗とウェブ掲載の金額が異なるといった指摘が多く、買い手と売り手の間での信頼関係を構築できなかったことが致命傷となり、2014年にはトップから転落。「Lazada」にその座を引き渡した。


CtoC取引が活発

別の視点でも市場を俯瞰してみたい。ベトナムでは小売店の売り上げ総額に対して、チェーン店の割合は20%以下と低い。その理由は、家族経営のいわゆる「パパママショップ」や個人経営の店舗がその大半を占めていることだ。また、近年では若者を中心に、副業感覚でFacebookを活用した商品売買も行われている。

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Facebookグループを通して行われる物品売買の
「Hội mua bán online dành cho mẹ và bé Việt Nam」

ベトナムでは東南アジアの他国の多分にもれず、Facebookが大人気だ。人々は1日平均3時間をFacebookに費やしているといわれるほどである。コミュニケーションの手段としてだけでなく、商品売買にも使われている。たとえば、上図にあるような物販専用のFacebookグループに商品を出品し、取引をすることが多い。売り手側は商品情報と電話番号などの連絡先をポストし、興味を持ったユーザーが掲載している番号に電話もしくはメッセンジャーで注文し、商品を直接注文者に届けて現金で回収するか、もしくはATMヘの振込を確認した後、商品配送するといった流れである。

近年、東南アジア全体でこのような個人間の取引が増えており、これにいち早く着目した「Lazada」は、同じ出資元であるRocket Internetが運営するCtoCマーケットプレイスの「Lamido」を2015年3月に吸収。「Lamido」のCtoCマーケットプレイス市場におけるシェアは現在75%にまで拡大している。

画像5_.png「Lazada」内で自分のオンラインストアを開設できる


モバイル強化が鍵

「Lamido」のマーケットプレイスのノウハウを生かし、「Lazada」はCtoC取引ができるプラットフォームの構築に注力をしており、現在は商品の配達、また専門家による商品販売のアドバイスまで一貫して行っている。「Sendo」も同様に注力していることから、ベトナムでのEコマース市場においてCtoC取引は今後ますます存存感を増していくだろう。

最後にこのCtoCの市場でもう一つ注目したいのが、SNSやモバイルアプリなどで商品取引される「モバイルコマース」。ベトナムではPCよりもモバイル端末の方が普及しているため、「Lazada」や「Sendo」はモバイルアプリに取り組んでいる。

このようにEコマースの動きが今後さらに活発化していくことで、家族、個人経営の小売店のEコマース化が加速していくことは必至だ。その流れを企業が取り込むためのカギは、モバイルの強化だろう。

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