今回は、台湾のEコマース市場の概況についてお伝えしたい。その前置きとして、台湾市場に関して日本語で書かれた情報がまだまだ少ないと感じたことを特筆しておく。これは台湾市場に対する日系企業の関心度合いを反映しているのかもしれないが、実際に調べてみると台湾は日本企業にとって進出先候補として十分に魅力的であることがわかった。

ユーザーあたりの単価で日本を上回る

まずは台湾のインターネット市場全体に関するデータをご紹介したい。2013年12月時点での人口は約2,300万人(*1)。少しさかのぼって2012年10月時点でのネット普及率は69%で、ネット人口は約1,600万人である(*2)。携帯電話の普及率は124%で、台数は約2,900台(*2)。スマートフォンの普及率は2013年末時点での総人口の51%で、これはすべての携帯電話の約4割に相当する。スマートフォン所有者のうち、モバイルインターネットを毎日使用する人は86%、週に一回使用する人も含めると96%にのぼる (*3)。

ここからはEコマースに特化したデータをご紹介しよう。台湾の大手ポータルサイトYahoo! TaiwanでEコマースグループの代表を務める Jacky Wang氏によると、2013年時点の市場規模はNT$7,673億(7,673億ニュー台湾ドル=約2兆8,614億円)で、前年から20%拡大した。2015年にはNT$1兆(1兆ニュー台湾ドル=約3兆7,328億円)に届く見込みだ(*4)。経済産業省によれば昨年日本で行われたBtoC(企業と個人の商取引)の取引総額は11.2兆円であり、台湾の市場規模は見込みでも日本の3割強にすぎない。しかし、ネットユーザーひとりあたりの単価を押し並べて計算してみると、その金額は日本を上回る。つまり、日本人よりも台湾人の方が、平均的なユーザーにおいてEコマースで支払う単価は高いのである(*5)。

続いて、モバイルのEコマースに特化したデータをご紹介しよう。昨年、Yahoo! Taiwanが4,470名の回答者を対象に行った調査結果によれば、44.6%の人がモバイルブラウザやスマートフォンアプリで買い物を行ったとのこと。これは前年の34.2%と比べて10.4%伸びている。

また、モバイルでの購入頻度は、45.5%のひとが「月に一度以上」、24.8%が「月に一度」と回答。30代の回答者のうち48.2%はスマートフォンで購入し、その割合はすべての年代の中で最も高く、50代の35.3%はモバイルで購入する際、金額設定に上限を設けていないという(*6)結果が得られた。

スマートフォンで購入した商品やそのプロセスに関する詳しいデータをみてみよう。スマートフォンを所有する60%が商品を探すのに検索エンジンを使用しており、57%が着メロ・待受画像・アプリ・その他のデジタルコンテンツをダウンロードもしくは購入し、39%がオンラインクーポンを店舗で利用している(*3)。ネットやスマートフォンの普及状況からしてもこの市場にはまだまだ伸びしろがあり、ユーザーひとりあたりの単価では日本を上回ることから、その国民性とEコマースとの相性は非常に良い。これより、台湾を進出先として検討する価値は十分にあるだろう。

*1 外務省「台湾基礎データ

*2 We Are Social「We Are Social's Guide to Social, Digital and Mobile in Asia (2nd Edition, Oct 2012)

*3 Google「Our Mobile Planet

*4 ZDNet「Yahoo looks to tap Taiwan's e-commerce market

*5 経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました- 国内BtoC-EC 市場規模は11.2兆円に成長 -

*6 Focus Taiwan「Mobile shoppers in Taiwan on rise: Yahoo survey

2強、トレンドの「Yahoo!」とデジタルの「PChome」

では、どのように進出すべきか。企業のEコマース利用は、多くの国と同様、「自社でサイトを立ち上げる」もしくは「モールに出店する」ことが考えられるが、台湾においては圧倒的に後者が主流である。これは外国企業に限らず、地場の企業にもあてはまる。地元の有力ビジネス誌『數位時代 Business Next』が2012年に発表したビジネスランキング「PowerSeller Top10」にノミネートされたファッションEコマース事業者のほとんどが、独自のEコマースを持っておらず、モールに出店している(*7)。経済産業省所管の独立行政法人JETRO(日本貿易振興機構)が公開している資料を見る限りでは「独自のEコマースを持ってはいけない」などという規制は見当たらない(*8)。それにも関わらずモールへの出店が主流である理由としてはモールが圧倒的な集客力を持っており、効率的であることや、サイトを運営できる人材やノウハウが企業に不足しているからだろう。また、台湾の事情に明るい人の話では、同業他社が自社サイトを立ち上げた事例が少ない中でのチャレンジには消極的になるという、一般的な台湾企業のやや保守的な性格も影響力しているのだろうとのことだ。もちろんこの仮説はすべての企業にあてはまるものではない。

台湾の大手モールは「Yahoo! Taiwan」と「PChome」。地元メディアによればこの2強だけで、市場の5~7割を占めるという。Yahoo!はアパレルなどトレンド商品に強みがあり若い女性の支持を集めている。一方、PChomeはデジタルガジェット商品に強みを持っている (*9)。

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Yahoo!奇摩 購物中心

Yahoo!は現在、2つのモールを運営している。同社が直接展開する「Yahoo!奇摩 購物中心」と、各Eコマース事業者が出店する「Yahoo!奇摩 超級商城」だ。後者は2012年11月時点で2,678店舗が出店していた(*10)。

同社が現在注力しているのはモバイルへの移行とO2Oサービスの開発である。Jacky氏によれば、2013年3月にショッピング用のスマートフォンアプリを公開し、それによってサイトでの購入が62%も向上したという(*6)。2013年6月時点ではユーザーの約4割がスマートフォンやタブレット端末からアクセスしている (*4)。またO2Oに関しては、地元のEコマースに関する情報を発信しているブログによると、コンビニエンスストアのFamilyMartと提携し、O2O(オフライン to オンライン)の取り組みを行ったようだ。これは店舗に商品の画像とQRコードが書かれたポップを用意し、「Yahoo!奇摩 超級商城」での購入を誘導するものであった(*11)。また、ユーザーのオンライン to オフラインの行動を促すためのプラットフォームを新たに提供する計画があるという(*12)。

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PChome 線上購物

PChomeもYahoo!と同様、同社が直接展開する「PChome 線上購物」と、各Eコマース事業者が出店する「PChome 商店街」を運営しており、後者は1万5,000以上の店舗と1,000万件以上の出品商品数を有している (*10)。

前出の地元ブログによれば、同社は配送サービスに注力しており、購入から24時間以内の配送を指定した場合、99.68%が遂行され、もし遅れた場合には100ニュー台湾ドル(約376円)が返金されるという。さらに購入から6時間以内の配送サービスも行っているそうだ(*11)。

Yahoo!以外の日系のモールとしては、楽天が台湾に進出している。楽天は現在、ファッション分野に注力しており、シンガポールのスタートアップ企業からの技術提供を受け、アップロードした画像と照合させて商品を検索できるヴィジュアル検索サービスの提供を開始した(*13)。

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「楽天ICHIBA」

決済はコンビニでの代引き払いで

台湾と日本のEコマース市場の違いで、モールの存在感に加えて挙げられるのが「決済手段」だ。近年はクレジットカード決済の普及に押されているものの、台湾ではコンビニエンスストアを使った決済手段が比較的よく利用されているのが特徴的だ。店舗に設置された端末での支払いや、店舗での支払いと引き換えにその場で荷物を受け取ることができるコンビニでの代引き払いが重宝されている(*10)。その他、直近の動向としては、人口のなんと約7割がユーザーといわれるLINEが2014年11月にP2PのEコマースアプリの提供を開始するという報道もあり、これからますます台湾Eコマース市場が活況をむかえそうだ(*12) 。

*7 コミューン「台湾EC市場における3つの特徴

*8 JETRO「台湾進出に関する基本的な台湾の制度

*9 コミューン「台湾主要ECモール取り扱い商品件数・商品カテゴリー比率

*10 クララオンライン「台湾EC(B2C)市場の概要

*11 eCommerce MILO「14 things you might not know about Taiwan

*12 Tech in Asia「Yahoo Taiwan aims to launch online-to-offline ecommerce by year's end

*13 ZDNet「Rakuten Taiwan launches visual search for fashion e-commerce

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