年平均134%でEコマース市場が成長するマレーシアではいま何が起こっているのか。「越境EC」と呼ばれる外資系Eコマースも増え続けている同国に、日本勢が入り込む「隙」は果たしてあるのだろうか?同国のEコマースの歴史とその特徴を探る。

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マレーシアツインタワー写真(ⒸLuke,Ma 2014)

ASEANでネット普及率No.2、マレーシアのEコマース市場を俯瞰

2014年に経済産業省が発表したマレーシアのネット利用者とその普及率に関する統計によると、マレーシアにおける総人口2972万人の内、ネットを頻繁に利用する数は1997万人と、国内の2人に1人がネットを頻繁に使っていることが分かっている。

マレーシアはASEANにおけるネットの普及率ランキングで2位の67.2%、1位のシンガポールとは僅差であり、世界経済フォーラムによる「The Networked Readiness Index 2013(ネットワーク整備指数)」では、全142ヵ国中30位に選ばれている。

ASEANの他国と比較してネットインフラが整備されている同国では、Eコマースをふくむネットを使ったビジネスが盛んで、その歴史は1998年にまでさかのぼる。

始まりは、いまも続く老舗のオンラインマーケットプレイス「Lelong.my.com」のサービスが開始されたこと。その後、航空会社「AirAsia」が航空券のEコマースサイトの提供を開始したことで人々のEコマースに対する認知度が上がった。現在では、国内外のものをあわせると50以上の主要Eコマースサイトが存在しており、その市場は2011年から2014年の間に240%と高い成長率で推移している。

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オンラインショッピング利用者を分析したインフォグラフィック
(Ⓒ ecommercemilo.com)

老舗オンラインマーケットプレイス「Senheng」と「EverydayOnSales」による、同国のネットユーザー626人を対象にしたオンラインショッピング調査では、対象者の91%がEコマースを利用している結果が報告された。性別に関しては男女にあまり偏りはなく、年齢層は26〜35歳がもっとも多く、その次に18〜25歳が続く。利用者層の主な特徴としては、低所得者層であることが分かった。

現在マレーシアで盛り上がりを見せているのが「Groupon」や「LivingSocial」など外資系の共同購入型Eコマース。同国発のサービスでは先述の「Lelong.com.my」が人気だ。

Eコマース利用者の主な決済方法は、国内Eコマースの場合はクレジットカードと銀行振込(インターネットバンキングを含む)が僅差で主流、次に代引きとなっているのに対し、外資系Eコマースではクレジットカードを利用する割合が全体の過半数を占め、次に「PayPal」という順番になっている。

大抵のEコマースはクレジットカード、インターネットバンキングに対応しているのに対し、PayPalや銀行振込、代引きに対応しているサービスは限定的。しかし、ファッション系のEコマースの多くは、多岐にわたる決済手段を利用者に提供しているようだ。

国内Eコマース市場を拡大した「Lelong.com.my

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「Lelong.cm.my」のトップページ。
時間制限があるプロモーションが実施されている。

マレーシアを代表するEコマースサービスと言えば、先ほどから何度か登場している「Lelong.com.my」が挙げられる。同サイトは1998年に始まり「利用者にローコストで取引市場を提供することで、物が行き交うコミュニティを作り、高品質なプロダクトを家庭やビジネスの場に届けたい」というコンセプトで運営されている。

元はCtoC型のマーケットプレイス兼価格比較サイトであったが、利用者からのフィードバックを受け、現在のBtoC型のマーケットプレイス型Eコマースという形になった。出品されている商品は、セカンドハンド商品から事業者が出品する商品と幅広い。出品されている商品の取引成約率は全体の70%と高い割合だ。[3]

しかし、オンラインでの商品売買は便利である反面、相手の顔が見えないことで不安になることもある。経済産業省が2014年に実施したマレーシアの消費者アンケート調査によると、同国でEコマースがより普及するための課題として「事業主への不信感」が挙げられる。

この課題を社内のスタッフによるカスタマーサポートだけで解決するのは難しいと考えた同社は、リアルな場所で売り手と買い手の意見交換ができるイベント「E-Commerce Fair」を開催し、ユーザーの不信感を無くすことに努めている。

同社のこうした取り組みは、国内のマーケットプレイスでもっともサイトトラフィック数が多く、マンスリービジター500万人という数字に成果として表れている。

住友商事が参入、日本のサービス品質で差別化を図る

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「SOUKAI.my」のウェブサイト

2014年9月、日本の大手総合商社の住友商事が、マレーシア全土に向けて生活用品を中心に販売するオンラインマーケットプレイス型のEコマース「SOUKAI.my」を開始した。運営主体は、住友商事の100%子会社のSumisho Ecommerce Malaysia Sdn.Bhd。同社は、マレーシアの小売市場全体におけるEコマース市場のシェアが1%にも満たないという事実に目を付けた。

「日本のサービス品質でユニークな商品を届ける」というコンセプトのもと、マレーシア在住者向けに日本製品、国外からの輸入品を販売する。現地の人々のニーズに応えた取り組みとして、決済方法に代引きを取り入れたり、物流はマレーシアヤマト運輸と提携し、日時指定対応など日本のきめ細かいサービスを現地で実現している。

Eコマースは、顧客がいかに抵抗感無く快適に利用できるか、顧客からの「信頼感」が大きなポイントとなるが「SOUKAI.com」は日本の物流システムを導入することサービス拡大をねらう。

マレーシアのEコマースでモノを売るコツ

マレーシア人のネットユーザーの多くは事業者への不信という理由から、自国のEコマースよりも越境Eコマースの方を信頼している。しかしここで問題となるのは「言語対応」だ。マレーシアは多国籍国家で、言語は英語、中国語、マレー語、ヒンドゥー語と多くの言語が日々飛び交っている。特定の文化圏の人々にターゲットを絞るのでなければ多言語に対応するための設備を整える必要がある。

また同国では、与信が理由でクレジットカードを持てない・作れない人々が存在する。こうした人々にもEコマースを利用してもらうためには、複数の決済手段を準備する必要がある。「SOUKAI.com」のように現地の物流会社と提携して代引きを可能にしたり、もしくは点在するコンビニエンスストアを利用したコンビニ支払いを活用することも手だ。

自国Eコマースと越境Eコマースに対しての懸念点について、国内の在住者から寄せられた声によると、

自国のEコマースは「商品配達の不達や遅延」「配達料の不当請求」というケースが相次いでいることが挙げられた。しかし、越境Eコマースに対しては「配送期間の長さ」を理由に利用をためらう人が多いとのこと。

配送期間の短縮がポイントとなるが、発送を都度増やすのは物流コストの増加という問題につながる。有効な手段の1つが「企業間の共同配送」。単品の商品を逐一配送するのではなく、小口混載でまとめて配送する。もしくは他の企業と提携して定期便をつくることで、スケールメリットを生かしたコストダウンを行うなどの工夫が考えられる。

今後も成長を続けるであろうマレーシアのEコマース市場。すでに、国内外ともに多種多様なEコマースサイトが存在するこのタイミングで、日本勢が頭角を現すためには、日系企業が垣根を超えて連携し、高い品質やホスピタリティを実現することが鍵となる。

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