米調査会社フォレスター・リサーチによると、世界のEコマース市場は2018年までに1兆6,000億米ドルに達する見込みだ。このうちアジア太平洋地域では中国、インド、インドネシアなどの巨大市場がけん引し、8,540億米ドルに拡大するという。

このアジア太平洋地域のEコマース市場の急速な拡大を狙い、Eコマース・スタートアップの「Clozette(クローゼット)」「ZALORA(ザローラ)」「Lazada(ラザダ)」などが相次いでシンガポールに拠点を開設している。シンガポールの隣国には世界で4番目の人口を誇るインドネシアがある。インドネシアのEコマース企業「Vera asia」のまとめによると、同国Eコマース市場は、人口増加やインターネット普及に伴い2015年に180億米ドル、2016年には250億米ドルと急速に拡大する可能性がある。

2015年2月には、中国Eコマース最大手アリババがインドネシア市場に本格参入することを発表したほか、インドネシア華人系財閥リッポー・グループが、同国で最大規模となるECサイト「matahariMall.com」を開始すると発表するなど、盛り上がりを見せている。また、こうした盛り上がりを見せるインドネシアEC市場に、日本企業も大きな期待を寄せている。

ソフトバンクは2014年10月22日、米子会社のソフトバンク・インターネット・アンド・メディア(SIMI)がアメリカのベンチャーキャピタルのセコイア・キャピタルなどとともに、インドネシアのEコマース大手Tokopedia(トコペディア)に総額1億米ドルを出資すると発表した。また、サイバーエージェント子会社でインターネット広告事業を展開するマイクロアドはEC事業展開をにらみ、ファッション情報を取り扱う女性向けメディア「MyKawaii Style」をソーシャルサイト経由で展開している。

地元パパ・ママショップを攻略するトコペディア

前述のトコペディアは、以前から日本のEC事業会社BEENOS(旧ネットプライスドットコム)やサイバーエージェントの連結子会社サイバーエージェン ト・ベンチャーズから出資を受けており、日本における認知度は他のプレーヤーに比べ若干高いかもしれない。

サイバーエージェント・ベンチャーズの鈴木隆宏氏は、トコペディアがEコマース利用者に安心を与える体制・機能を強化していることに加え、地元で圧倒的に多い「パパ・ママショップ(家族経営小売店)」をうまく攻略していることが資金調達成功の理由と指摘する。

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鈴木隆宏氏(サイバーエージェント・ベンチャーズ)

旧来型のEコマースサイト・マーケットプレイスでは、サイト上インフラが整っておらず購入者は店舗と直接メールでやりとりする必要があり、悪質な店舗が商品を届けることなくお金を持ち逃げすることも多く発生していた。このようなリスクを軽減するためにトコペディアは、購入者に注文した商品が届かなかった場合の返金体制やサイト上の機能を整備した。

外資系Eコマースサイトは、主に大型ショッピングモールで出店しているような大手ブランド・企業へのアプローチに注力しているが、パパ・ママショップ開拓には意欲的ではない。大手ブランド・企業は知名度が高いだけでなく、Eコマースのオペレーションがある程度確立されているためだ。

また、パパ・ママショップのマネジメントの困難さも外資Eコマースの開拓意欲を削ぐ理由となっている。パパ・ママショップは、出品している商品が本物かどうか不明な場合が多いことに加え、購入者に商品が配達されないリスクが高く、マネジメントが難しい。一方で、トコペディアはパパ・ママショップ専門部隊を持ち、マネジメントの精度を高めようとしている。またサイト上では、店舗に対する購入者からのレイティング(格付け)やレビュー機能を整備しているため、店舗に対する評価が可視化され、サービス品質を高める効果を生んでいる。

実際、「トコペディアでは必ずしも他店に比べ商品を最安値で出品していなかったとしても、レイティング・レビューがよいため顧客を集めている店舗が増えている」(鈴木氏)という。

トコペディアの取り扱い商品と使用感

トコペディアの取り扱い商品カテゴリは、「衣類」「美容」「健康」「キッチン」から「携帯・タブレット」「ラップトップPC」「デスクトップPC」「電化製品」「カメラ」「ソフトウェア」のPC・ガジェット系、「オフィス用品」「食品・飲料品」「書籍」など広範囲をカバーしている。

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トコペディアが扱う商品カテゴリ

基本はインドネシア語での操作になるが、英語ページも用意されている。ただし、すべてが英語になっているわけではなく、完全な英語ページは現在開発中と思われる。

使用感だが、アマゾンを想わせる直感的なインターフェイスで、かなり使いやすい。商品を選択すると、同一・類似商品がレコメンドされる仕組みで、価格・レイティング・レビューを確認しながら、購入する店舗を選ぶことができる。購入ボタンもアマゾンと同じ位置にあり、分かりやすい。レイティングは「スピード」「正確さ」「サービス」の3項目が評価対象となっている。

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トコペディアの商品ページ

indnesia05.jpg トコペディアの購入ページ

インドネシアEコマース市場の課題

インドネシアEコマース市場の課題として、鈴木氏は一つにエンジニア不足を挙げた。インドネシアでは大規模トラフィックのサイトが少ないため、そのようなサイトの開発・運用を経験した人材を探すのが非常に困難だ。ほとんどの場合、エンジニアは壁にぶつかりながら開発・運用を進めていくしかない。トコペディアでは、昨年のセコイア・キャピタル、ソフトバンクグループなどからの大規模な資金調達のニュースをきっかけに、優秀な新卒学生の採用が多少促進されたという。

物流インフラに関しては、この数年で特に改善が進んでいるわけではないとのこと。また、梱包するダンボールが凹んだ状態で商品が届いたり、日時指定配送の概念が浸透していなかったりと、日本基準で見ると課題が多いように思える。しかし、そのようなことが日常茶飯事に起こるインドネシアで育ったひとびとはあまり不便を感じていない。渋滞するジャカルタで自動車を使い配送する場合、配送量を増やすことは難しく、利益拡大は困難だ。トコペディアには当てはまらないが、この課題に対してバイク配達で利益を確保する動きもある。

同氏いわく、インドネシアにおけるEコマースサイトの決済手段は、オンライン・バンキングが全体の約60%、クレジットカードが20%を占めている。キャッシュオンデリバリー(代引き)の比率はかなり小さく、Eコマース運営者にとっては好ましい状況といえる。というのも、不在で代金を回収できない場合、再度配送しなければならず人件費が必要以上にかかったり、商品が届いたその場で返品されたりすることがあるからだ。

Eコマースを展開したい日系企業への提言

クールジャパン事業で積極的な取り組みが行われているが、インドネシアで日系ブランドは浸透していない。このため突然Eコマースを展開しても急速な拡大は見込めないだろう。

インドネシアで浸透している日本ブランドといえば、ユニクロぐらい。地元では韓国ブランドの方が浸透している。Eコマース展開を狙う日系企業は、日本ブランドが必ずしも強くないことを自覚し、まず知名度を上げる努力をする必要がある。また、小規模なテストマーケティングを実施し、市場のトレンドを把握することも重要だ。

Tokopedia(トコペディア)」

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