あらゆるものがウェブで買われるようになってきた韓国市場

韓国統計庁によるEコマース事業者を対象におこなった調査結果(2014年2月発表)によると、2013年に国内で行われたBtoC(企業から個人へ)の取引の総額は24兆3310億ウォン(およそ2兆5400億円)で、2012年の21兆1600億ウォン(およそ2兆2090億円)から市場は15%拡大した。日本の経済産業省によれば昨年日本で行われたBtoCの取引の総額が11.2兆円であるから、その規模は10分の1程度にすぎないが、韓国のEコマース市場は毎年およそ10~15%増のペースで拡大しており、高速インターネットやモバイル端末、多様な決済手段の普及を鑑みれば今後も成長が見込めるだろう。

2012年最もさかんに取引された商品カテゴリーは「旅行」で全体の16.7%を占める。続いて、「衣料品」が16.3%、「生活日用品・カーアクセサリー」が11.1%、「電化製品・通信機器」が10.6%、「食品・飲料」が8.4%、「コンピュータ・関連商品」が8.0%と続く。今年特にEコマースでの取引が増加したカテゴリーは、「スポーツ・レジャー用品」(前年比27.9%)と「乳幼児・子ども用品」(同21.6%)、「農業・釣り用品」(同18.2%)で、Eコマースを通じて取引される商品の裾野が広がってきていることがわかる。ちなみに、CtoC(個人間)の取引の総額は14兆1630億ウォン(およそ1兆478億円/前年比9.7%)で、こちらも市場は拡大している。

韓国の代表的なEコマースサイトには、2000年にサービスを開始し09年に米eBayに買収された「Gmarket」(海外では「Qoo10」の名称でサービスを提供)、主に百貨店を運営する「LOTTE」、ミュージカルやコンサートのチケットの販売を行っている「Interpark」などがあるが、近年、ファッションに特化したECサイトが、韓国のみならず日本でもその存在感を強めている。2000年代中盤から日本に進出し、K-POP人気を追い風に女性からの人気を博してきたからだ。

今回はそんなファッション系ECサイトの中から、とくに人気のある「DAHONG」を取りあげ、その人気を支える韓国流の工夫を探りたい。

ほしい洋服がどんどん増えてしまうサイト作りの妙

DAHONG2004年に韓国でサービスを開始したDAHONG

サイトの構成はシンプルで、トップスやシャツなどのカテゴリー、また新作や売れ筋といったコンテンツで商品を検索することができ、ここに目新しさはない。印象的なのは、トップページのファーストビューのほとんどを占めてしまうほど大きな写真と、その下に続く縦長に並ぶたくさんの写真だ。そこには売れ筋のワンピースも新作のアクセサリーもサイトがオススメするシューズも混在しており、商品がランダムで紹介されているようだ。

比較対象として日本の某大手ファッション系ECサイトのトップページでは、商品のカテゴリーやコンテンツ、ブランド名を示すテキストリンクが目立ち、商品やコンテンツはチラ見せ程度に表示されている。この構成はお目当ての商品を探しやすくする検索性を重視しており、トップページはあくまで商品やコンテンツを集めた各ページの入り口としての役割を担っているように見受けられる。一方、DAHONGのトップページではサイトの概要は伝わりにくい。

双方でしばしウィンドウショッピングをして感じたのは、サイトがユーザーにしてもらいたい「商品の見つけ方」の違いである。日本のサイトでは、回遊するうちに「あのブランドの新作出てないかな」「秋に着られるシャツないかな」「セールで安くなっている商品ないかな」と自分がほしい商品のイメージが徐々に絞り込まれていくが、DAHONGではカテゴリーをまたいだ商品提案、コーディネート提案がされるため、ほしい商品があれもこれもと広がっていくように感じられた。

いつでも新しい商品がある緻密なマーチャンダイジング

NEW 10%「NEW 10%」のページ

DAHONGを細かく見ていくと、緻密なマーチャンダイジングがなされていることがわかる。たとえば、「NEW 10%」というページがある。ここでは、最近入荷された商品が紹介されているが、ある日に訪れてみると20以上の商品が陳列されていた。日によってその数は変動するとはいえ、それだけの新作を用意するのは簡単ではないはずだ。ファストファッションが流行した要因のひとつである、いつ訪れても新しい商品に出会える状況を作り出している。

しかもこのページでは、売れ残りではなくサイトに掲載されてから24時間以内の新作が10%オフの価格で販売される。ユーザーからすれば新作をより安く買えるわけだから、どのような商品が入荷されているかはわからないが更新されているかチェックしにいこうという動機になり得るはずだ。さらに、その24時間の初動が、今後必要となる商品の在庫量の目安となりうるため、商品を卸すメーカーやDAHONGにとっても在庫を抱えるリスクを軽減するメリットにつながるだろう。

最後にもう一点。ウェブで洋服を買うことの難しさは、やはり試着ができないことではないだろうか。いわずもがな洋服は、見るのと着るのとではまったく違うからだ。そのギャップを埋めるのに有効だと考えられているのが「コーディネート」である。日本の大手サイトでは、ブランドのプレス担当や店員が着こなしを披露する写真を掲載することが多いようだ。一方、DAHONGのそれは言葉では表現しにくいのだが、なんだかもっと「アガる」感じがする。

ユーザーを思いきらせる、魅せるプロの提案力

百聞は一見にしかず。DAHONG内の商品紹介ページをご覧いただきたい。

DAHONG ワンピース

ワンピースの商品紹介ページ(出典:DAHONG)

このページを上から下までスクロールして感じたのは、コーディネートというものの果たす役割は、必ずしも洋服の見た目と実際に着たときのギャップを埋める、または自分が持っているほかの服と組み合わせたときのイメージを膨らませるだけではないということである。試着できないユーザーには一定の「思い切り」をさせることが必要で、そのためにはモデルのポージング、撮影するロケーションの演出を含むプロの技術が有効なのだろう。DAHONGに掲載されるまるで雑誌の切り抜きのような写真には、洋服を着たときの気分やライフスタイルのようなふわっとしたものではあるけれど、欲求をかきたてる何かが表現されている。ページの最後でモデルのプロフィールを表示しているのもそれを後押しする狙いがあるはずだ。

日本のものと比較すると、その独自性が如実に現れているDAHONG。女性の感性に訴えかけるサイト作りとコーディネートを最大限にみせる商品ページの織りなす 「アガる体験」が人気の秘密なのかもしれない。

DAHONG

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